悪用厳禁!?「子供がどんどん動く魔法の言葉」
こんにちは!カズ先生です。
教室で運動指導している際、よく生徒の保護者さまに「先生は子供の扱いが上手いですね」とお褒めの言葉をいただいたり、「親が教えるとどうも上手くいかなくて…」とお悩みの声をいただいたりします。
そこで今回は、普段私がどのようなことを意識して、子供たちへ指示を出したり行動を促しているのか、「子供たちの動機づけの方法」の一端を記事を通してお伝えしようと思います。
最大のヒント「心の三大欲求」を押さえろ
まず、いつも私が心の肝に据えている大前提があります。
それは
「子供は別に運動が上手くなりたい、何かが出来るようになりたいと思っている訳ではない」
ということです。
縄跳びが跳べるようになって欲しいのは、我々指導員や親であって、子供本人ではないからです。
確実に運動が上達することで得られる多大なるメリットは存在するものの、子供自らそれに対して明確な目的意識を持ってレッスンに取り組むということはほとんどありません。
このような子供に対して大人が思っている【望ましい行動】をさせたい時、やはり提案そのものに工夫が必要となるでしょう。
子供がよりポジティブな気持ちでこちらの思惑通りに動いてもらうために、普段私が一番大切にしていること、それは
【心の三大欲求】です。
心の三大欲求とは
- つながり
- 有能感(できる感)
- 自律性(自分から感)
この心の三大欲求は心理学の中で、人間が動機づけを行う上で非常に重要な要素と位置付けられています。
このニーズを満たすことで人間の自己肯定感が向上し幸福度が増すと言われています。
(※気になる方は「自己決定理論」で検索してみてください👍)
「つながり」とは
文字通り人と繋がっている感覚、関係性とも表現されます。
例えば人に親切をする時、このつながりの欲求を満たしていると考えられます。何かいいことをして感謝される。そこに心の欲求があるため人は親切な行動をすると言われます。
「有能感」とは
自分の能力やその証明に対する欲求です。何か課題や目標に対して達成したり成功したり、自分の能力の向上を感じたりすることでこの欲求が満たされます。
「自律性」とは
自分の行動を自ら決定することです。他人に言われて行うのではなく、自らが好み選択した物事を行っている時はどんな方も心が充実していることを感じられるのではないでしょうか。
心の三大欲求を意識した声掛けケーススタディ
では運動教室においてこの心の三大欲求を用いてどのように子供たちを動かしているか、例を挙げて解説していきます。
<逆上がりの練習>
あるクラスで「逆上がり」を中心課題として運動に取り組んでいるとします。
逆上がりの成功にはつかんだ鉄棒を引き体を鉄棒にくっつける筋力が必要です。そのために「斜め懸垂」を練習することを私は提案します。斜め懸垂は腕の筋力が未発達な子供にとっては高い負荷のかかる運動です。当然モチベーションが上がらず、ふざけてしまったり適当にやる子が出てきます。
そんな時は「先生と一緒にやってみよう」という声掛けをします。一緒に行うことで子供はつながりを感じ、やってみようかなという気持ちが芽生えます。または「手伝ってあげる」と言って背中を軽く支えてあげるのも良いかもしれません。適度なスキンシップを行うことも相手とコネクトする一つの良い手段と言えます。
また、完璧に出来ていなくても「肘を曲げて鉄棒をお腹にくっつけられたね!」と具体的に褒めます。そうすることで、子供には有能感が芽生え、次に「あとはもう少し背筋をピン、と伸ばしてみて!」という指摘も素直に受け入れてくれます。
正直これはただの「オウム返し」です。ですが、出来ていることを具体的に取り上げ的確にフィードバックすることで子供をモチベートすることが出来ますし、動作の完成と同じくらい子供が内発的に動機づけを行うことが重要です。
さて、運動の習得にとって非常に重要なことは「動作の反復」です。しかし斜め懸垂は前述したように非常に負荷の高い運動。先生が「10回やります」と言っても中には「そんなの無理!やりたくない!」と言い出す子もいます。
そんな時は選択肢を与えてみましょう「よしわかった。じゃあ5回やるか、3回やるか好きな方を選んで!」
話の論点は「やるか/やらないか」にあったところを「やるか/やるか」の二択にすり替えます。
しぶしぶ子供は「じゃあ3回…」と少ない方を選択。「OK!頑張って!」と先生。これは、自律性を使った声掛けです。選択肢を提示し選んでもらうことで、自分で決定するという段階を踏みます。自分で言わせることで自律性が満たされ行動に移りやすくなるのです。
そしてここで忘れてはいけないのは、このあと「すごい!3回全部鉄棒に胸をくっつけられたね!」とポジティブフィードバックをすかさず行いましょう。次のセットでこの子は高い確率で自ら斜め懸垂を10回行うはずです。秘儀「有能感と自律性のコンボ」です(笑)
非常に単調かつ辛い「斜め懸垂」に取り組んでもらうために、このようなコミュニケーションの工夫を行っています。
日常生活に当てはめるとどうでしょう。
例えば、なかなか宿題に取り掛かれない子供がいた場合、どんな声掛けが考えられるでしょうか?
- 一緒に考えてみよう(つながり)
- ゲームと宿題どっちを先にやる?(自律性)
- すらすらペンが動いてるね(有能感)
- 今日は2ページだけやってみよう(見通しを立てる→有能感の逆張りで「そのくらいならできるかも」と思わせる)
- 宿題達成カードを作る(自律性、有能感)
すみません、日常生活で子供にいうことを聞いてもらいたいシチュエーションが思い浮かばず例が乏しいですね💦(笑)
ですが、心の三大欲求に訴えかける声掛けや仕組みを探すことで、変に怒ったり理不尽にやらせたりということは少なくなり親子共に楽になるのでは、と感じています。
子供の脳は理性や思考を司る部分が未発達ゆえ、目標志向的な行動をすることが苦手です。まずは外発的な動機づけだとしても良いので、その中で心の三大欲求を満たすようにサポートをしてあげましょう。
運動を通して子供を見ていて感じることですが、どんな子も最初は外発的動機付けにより運動をしていてもその取り組みの中で徐々に自己肯定感が上がり、成長することに喜びを感じるようになります。そして最後は自らの内発的な動機づけにより運動を楽しむようになっていきます。
まとめ
ここまで【悪用厳禁!?「子供がどんどん動く魔法の言葉」】と題し、子供をモチベートする方法について解説してきましたが、見方によってはただの「心理操作テクニック」です。
子供の心を操る、と聞くと何だかいかがわしいような印象を持つかもしれません。
ですが、小さな子供が自ら色々な世界に視野を広げるのは難しい中で、なるべく充実した成長の機会を提案し多様な価値観を育む上でこのような声掛けは必要不可欠だと感じています。
誰にとっても自分のコンフォートゾーンから抜け出すことは心身ともにエネルギーを必要とします。
新しいことにチャレンジするとき、面倒くさくても自分や他人のためになることを行う時、高い目標に達成するために不屈の努力が求められる時、将来子供がそんな場面に出くわした時に、自らを奮い立たせられるようになれるよう、心の中で糧となる経験を作ってあげたいと常々思っています。
最後に、今回のテーマで簡単に語った動画もよかったらご覧ください♪